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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<2003年5月17日>━ ■■■ ■■■「知」とIT/ビジネスへのTIPS ■■■ 情報資本主義の今を考えるコラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://kinyuu-literacy.hp.infoseek.co.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
第8号 Think Different アップルがやった事(1)
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■アップルが音楽配信事業へ進出 ─────────────────────────────────── 5月5日子どもの日,あのアップルが「サービスを開始してから最初の1週間 で,100万曲以上を販売した」と発表した。これを受けThe
New York Timesの オンライン版は,「Steve
Jobsはまたもや"離れわざ"をやってのけた」と称賛 したものだ。
アップルが音楽配信事業に進出したのだ。 昨年の構想発表時、成功を予想する向きは業界の半分くらいのイメージだった。
初日は4月28日。この日だけで推定20万曲を売り上げた。これはMusicNet やPressplayなど先行する音楽配信サービス全体が,半年かけて売り上げた曲数 のほぼ半分に匹敵する。音楽配信事業が,初めて「商売」らしい商売になる可能 性を見せた瞬間だった。
■この現象の含意 ─────────────────────────────────── これは3つのことを象徴的する出来事である。
1.モノの生産より、情報の生産が重要な社会が到来した=情報化社会 2.IT技術とは、1.を可能ならしめる条件整備のことであり、IT革命が 直ちに情報化社会を招来する訳ではない 3.デフレの根っこにIT革命があり、21世紀は構造的にデフレが進行する
■二人の石工 ─────────────────────────────────── よく引用される二人の石工の話から始めよう。
二人の石工が石材を削っていた。 その一人に尋ねた。 「あなたは何をしているのですか」 「ご覧の通り、私は石を削っているのです」
もう一人に尋ねた。 「あなたは何をしているのですか」 「ご覧の通り、私は教会を作っているのです」
目的と手段、ないし目的のレベルの違いに注意を喚起させる挿話である。 最初の石工にとって、削る事自身が目的である。だから石を取り上げられる事 は理不尽だ。生活の糧を得る手段を奪われるからだ。
二人目の石工にとって、最終の目的は「教会を作る事」だ。石を削る事はその 手段に過ぎない。だから何らかの事情で、木で作る事態、セラミックで作る事 態になっても、「教会を作る事」のためにそれが必要なら、木を扱う事、セラミ ックを扱う事を厭わない。
さて音楽の業界へ戻ろう。 米国では昨年音楽CDの売上が10%落ちた。3年連続の下落だ。しかもこれは 世界的な現象だ。 http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20053526,00.htm
日本も事情は同じである。 http://www.meti.go.jp/policy/media_contents/downloadfiles/0313music.pdf
世界的なレコード会社、レーベル会社はネットでの違法なダウンロードがその 原因だとして非難している。
違法行為は確かによくない。 但しネットでの(法を犯さない)音楽配信事業は誰にとって良くないことなの だろうか。 音楽CD売上減は一体誰にとって良くない事なのだろうか。 レコード会社、レーベル会社はそもそも「音楽配信」が会社の「目的」ではな かったか。これまで、たまたまレコードだった、たまたまテープだった、CD だっただけなのではないか。 パッケージが何かは本質論ではない。 ネットだともうパッケージすらいらない。
パッケージはなくったっていい、「音楽配信」でミュージシャンが喜び、音楽愛 好家が喜ぶのなら。
あなた方は一人目の石工になっていませんか。私は二人目の石工を目指します。 アップルはそうやって、PCメーカーからの華麗な変身を遂げたのだ。ソニー のお株を奪って。
■iTunes Music
Storeとは ─────────────────────────────────── 事業の内容を具体的に追いかけよう。
アップルはネット上にiTunes Music
Storeをオープンした。 要はアマゾン(※)の音楽版だ。 iTunesという既存ソフト(デジタル音楽再生/管理)の活用,レコード会社の 幹部を説き伏せたJobs氏の交渉力,そして,デジタル音楽プレーヤである iPodの存在,この3つが重なって実現したサービスといえる。
月額、年額の会費はとらない。ユーザーは1曲の価格を99セントで,アルバ ムなら価格は9.99ドルで、ダウンロードして買える。
購入した曲は個人で利用することを条件に,何回でもCD焼き付け可能(厳密 には「連続して10枚まで」という制限あり。しかしこれは曲順さえ変更すれば, 同じセレクションで11枚以上のCDが作成できる。同じものを大量生産できな いようにする程度の制限にとどまっているのが特徴。)
再生に利用する携帯型音楽プレーヤ「iPod」の数は規制を受けない。 PCへの転送は3台まで。これは,ユーザーが,自宅のパソコン,移動中のノ ート・パソコン,職場のパソコンと,3つの場面で同じ楽曲を聴けるようにす ることを考慮している。新しいパソコンを購入し,パソコンが4台になってし まった場合は,どれか1台のiTunes
4上で,認証を解除すればよい。
しかも購入した楽曲は,ネットワークにつながっているパソコン同士で,スト リーミング方式で共有できる。つまり誰かのパソコン上にある音楽ファイルを 自分のパソコンで聴くことができるのだ。これは,iTunes
4に搭載されている Apple社のネットワーク自動検知/設定技術「Rendezvous」により可能になっ たもの。こんな楽しみ方もできる。
加えて音楽ショップに行く以上の利便性がある。 まず品揃え。 iTunes Music
Storeは5大レーベルの総計20万曲のライブラリを備える。また、 ボブ・ディランやU2など20のアーティストの曲目を独占的に提供する。
5月6日より新たに3200曲を追加する計画。Jack Johnsonの「On and On」, Andrea
Bocelliの「Tosca」,Fleetwood Macの「Say You
Will」といった新譜 などが含まれる。そのほか,Michelle Branchの「The Spirit Room」やAlanis
Morissetteの特別ビデオなども加える。
そんなに並べられてもリアルな小売店で全部を探す事はできない。しかしここ でユーザーは,タイトル,アーティスト,アルバム名から楽曲を検索自由自在。 性別,アーティスト,アルバムでコレクション全体をブラウズできる。しかも 購入前に無償で30秒間試聴することが可能。 購入は、あのアマゾンの「ワンクリック」と同じ。簡単。
********************************************************************* 次回は「この現象の含意」を更に具体的に深堀り、情報資本主義の意味を考え ます。
※アマゾン・ドット・コム 1995年7月に米国シアトルでサービスを開始した世界最大のインターネット書 店。ウェブ・ページに本のデータベースを公開し、受注商品を宅配で届ける。 日本での営業(00年開始)は再販制度の壁から、米国ほどの伸びにはなってい ない模様だが、出版不況の中、成長は衰えていない。 ワンクリックでの簡便さ、ネットならではの品揃えの豊富さ、購入履歴データ を元にした販促手法の導入が成長の鍵とされる。
日本では丸善と紀伊國屋書店がオンライン書店を95年開設。以後、八重洲ブ ックセンター、三省堂、文教堂、ジュンク堂、旭屋書店などが続いた。ヤマト 運輸(クロネコヤマト)と取次の栗田(くりた)出版販売との合弁によるブックサ ービスも、96年にインターネット書店を開設した。また取次各社も、単独、あ るいは数社合弁で、e-hon(トーハン)、本やタウン(日販)、本の問屋さん(大 阪屋)などを設立。そのほかに、トーハン、ソフトバンク、セブン‐イレブン・ ジャパン、ヤフーなどの出資による「イー・ショッピング・ブックス」、図書館 流通センター、日経BP、アスクル、富士通、日本経済新聞社、電通などによる 「ブックワン」、文教堂、オリコン、角川書店、講談社、マイクロソフト、トー ハンなどによる「ジェイブック」など多数のオンライン書店が誕生した。
しかしいづれもリアルな小売店をネット上に移しただけの形態で、購買履歴、 購買者属性のデータを加工し、顧客利便性へつなげる工夫という点で、アマゾ ンに及ばず、流通の主流となるにはほど遠い状態。
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